『運命の風』(Wind of Fate)第七話へ戻る ページ: 1/ 2/ 3/ 4/ 1ページ目D&D3.5edキャンペーン『Wind of fate〜外伝〜』#7.5『伝説の勇者』 これは、ブレイブ・カルテットがイルザルシパル・ヴァレーでジェンナを救出した頃の話である。 ―トニムの森― すっかり荒れ果てている森の中に、一人のノームがいる。 ラヴィリーナの姉ローリエリーナの親友であり、ラヴィリーナにとって近所の優しいお姉ちゃん的存在の“お茶目な”スコラルだ。 ________________________ 【ノーム】小型サイズの人型生物 この人型生物の背丈は人間の半分とちょっとしかない。体つきはちんまりしていて、濃い褐色の肌、明るい色の髪の毛、大きな目を持っている。 ノームは生来の探険家、いたずら者、発明家であり、幻術と錬金術のコツをよく心得ている。 身長は3〜3.5フィート(約90〜105cm)、体重は40〜45ポンド(約18〜20kg)。肌の色は濃い褐色から、木肌のような茶色までいろいろ。髪は明るい色。目の色は青だが、一口に青といってもいろいろである。男は好んであごひげを短くきれいに刈りこんでいる。ノームはおおむね革服や土色の服を着た上で、それを複雑なぬいとりや上等の宝石で飾りつける。ノームは40歳ほどで大人になり、350年ほど生きるが、中には500年近くまで生きる者もいる。 ノームは知りたがり屋で、何事も自分で実地に経験しておぼえたがる。時として向こう見ずのきらいもある。強い好奇心を持ち、物を作り出す新しいやりかたを常に試行錯誤しているので、ノームは腕利きの技術者になる。彼らは時として、引っかかった人々がどう反応するかを見たいというだけの理由でいたずらをしかける。 ノームは自分たちの言語(=ノーム語)を話す。ノームの土地を離れて商人、鍛治屋、冒険者として旅するノームの多くは共通語も知っている。一方、ノームの集落にいるウォリアーたちはゴブリン語を学ぶのが普通である。 故郷の外に出ているノームのほとんどはウォリアーである。 (D&D第3.5版モンスター・マニュアルより) ________________________ 実は、トニムの森がウィーノス・エルフ達の襲撃を受けた日、スコラルはノームの商人ナムフードゥル・エールたぷたぷ・ラウルノールと共に遠出していた。 3ヶ月を越える長旅から帰ってきて、トニムの森の様子を見たスコラルは、ショックで愕然としつつも、冷静に状況を把握し、商人ナムフードゥル・エールたぷたぷ・ラウルノールが持っているクリスタル・ボール(魔法念視装置)を使い、ローリエリーナをスクライング(念視)する事にした。 スコラル「(ナムフードゥルから水晶球を奪い取る)はよう貸してや!コレ、どないしてつこたらええーの?」 ナムフードゥル「念じるだけで、誰でも簡単にスクライング(念視)ができるよ。とくに親しい者なら、どれだけ離れていてもね。ああ、くれぐれも乱暴に扱って壊さんでくれよ?」 スコラル「わかっとうがな!あ!ローリエや、ローリエがおる!ごっつい鎖で捕らえられていてる!」 ―水晶玉に映し出された光景― そこは地下都市と呼べるほどの広さを持つ巨大な鍾乳洞で、辺りにところどころヒカリゴケがあり、薄暗い光源を作りだしている。 ひと際広い大広間の中央に、40フィート(約12m)四方のステージ(舞台)がある。 そのステージの中央には2本の柱が立っており、その柱と柱の間に、鎖でつながれたローリエリーナがいる。 ローリエリーナの全身には鞭で打たれた無数の傷跡があり、数か月に及ぶ責め苦により、かなり衰弱している。 気を失っているが、かろうじて生きてはいるようだ。 スコラル「・・・どうやら命だけは無事みたいやな・・・せや、らびたんは一緒やないんか?!・・・ってかここどこや?おい、ローリエ、聞こえるか!?ウチや!親友にして天才美少女ノームのスコラルや!」 ナムフードゥル「無駄だよ。残念ながら、そのクリスタル・ボールには、テレパシー通信機能はついてないんだ・・・」 スコラル「なんやて?なんでついてへんの?!ったく、コイツは・・・普段せこく稼いどるのに、肝心な事に金を使わんで・・・ああもう、このドアホ!マヌケ!トンマ!ウスラトンカチ!」 ナムフードゥル「・・・すまん・・・」 普段なら、このような言われ方をしたら怒るナムフードゥル・エールたぷたぷ・ラウルノールだが、親友の事を心配して焦るスコラルの心境を考えると、何も言えなかった。 スコラル「あーもうっ!どーにかならへんの?!この映像だけじゃ場所わからんやん?!」 ナムフードゥル「一つ方法がある。デル地方にあるラバンニックの街にいる占い師カーリーなら、正確な居場所を突き止められるはずだ」 スコラル「こうしちゃおれん!今すぐラバンニックの街に出発や!」 ナムフードゥル「もちろんだとも!すぐに騎乗用グリフォンを手配しよう」 スコラル「秒速で頼むで!よっしゃ、お次はらびたんをスクライング(念視)や!」 ナムフードゥル・エールたぷたぷ・ラウルノールの水晶球で、ラヴィリーナをスクライング(念視)する。 スコラル「あ、おった!らびたんおったで!元気しとるやん。少し見ないうちにだいぶ凛々しいお顔になって、スコ姉さんむっちゃ嬉しいわぁ♪」 ラヴィリーナの無事は確認できた。 ローリエリーナとは違い、元気な姿で、ハーフエルフの剣士、ドリック族の戦士、全身甲冑の騎士といった仲間達と共に、冒険をしているようだ。 スコラル「ほうほう、そこそこ腕の立ちそうなお仲間さん達連れはって、これならひとまず安心でけそやな。ほんま良かったわ〜」 すぐにラヴィリーナに会いたい気は山々だが、今はローリエリーナが一刻を争う状態ゆえ、占い師カーリーに会わねばならない。 こうして、“お茶目な”スコラルと商人ナムフードゥル・エールたぷたぷ・ラウルノールはデル地方へ旅立った。 ―大きくて薄暗い鍾乳洞の大広間の舞台― ラヴィリーナを逃がすため、単身囮となったローリエリーナは、魔物達を相手に、地の利を生かした器用な戦い方で抵抗したが、結局は多勢に無勢、最終的に身動きのとれない状況となり、捕らえられた。 本来ならば、即、殺されるところだったが、たった一人でありながら、ここまで魔物達に打撃を与えたローリエリーナの実力に興味を持った者がいた。 魔物を率いていたリーダー、ウィーノス・エルフのキャルブリリィである。 ________________________ キャルブリリィ 種族:ウィーノス・エルフ(ドラウ) クラス:クレリック7 トニムの森侵略部隊リーダー。 ドラウという種族は、女性優位な考え方を持っているが、彼女の場合、その思いがとりわけ強く、自分及び自分の物の半径5フィート(約1.5m)以内に、決してジャルーク(ドラウ語で男の意味)を近づけさせない。 その反面、同姓にシンスリッグ(快楽、欲望、情熱)を感じる。 キャルブリリィ「この世のジャル・ジャルーク(全ての男)はイブリス(クズ、ろくでなし、糞)同然の存在だ!」 ________________________ ウィーノス・エルフの最終兵器といえる邪神を復活させるためには、大量の生贄を必要とする。 そして、その生贄は、『強力な魔力を持った生娘』である事が望ましい。 そこで、キャルブリリィは、このローリエリーナを邪神復活の最高の生贄に作り上げ、そのズンド(努力、偉業)、功績により、ウィーノス・エルフの中での地位を上げようと考えたのだ。 こうして、ローリエリーナの調教の日々が始まった。 ローリエリーナの身体には、色々な魔法薬が投与され、生贄としての能力を増強しつつ、キャルブリリィのシンスリッグ(快楽、欲望、情熱)を満たすための肉奴隷として、様々な責め苦、ありとあらゆる凌辱行為を受けた。 飢え死にしては生贄にならないので、飲食物は与えられたが、両腕を拘束され、まるで動物のように顔だけで屈辱的な食事をさせられるのである。 しかし、そんな姿を地下都市に住む全ての住人達(ドラウやドゥエルガル、オーク、ゴブリンなど)に見られる事など、この後待ちかまえている恥辱に比べればどうという事はない。 キャルブリリィ「皆の者、とくと見よ!このダーシアー(ドロウ以外の地上に住むエルフ)の無様な姿を!こやつは古の時代、ウドス(我々)・マッラ(栄光ある、誇り高き)・ウィーノスをオブルス(落伍者、のけ者)扱いにしたオゲレンド(裏切り者、異端者)の種族、イスリルル族の娘だ!イスリルル族一のストリーカ(勇猛さ、勇敢さ)を誇る最強戦士も、このキャルブリリィ様の前では、この世でミルスト(最も)・ハール(低い、下の、卑しい)・ロス(奴隷、家畜、下僕)になり下がるのだ!」 ドラウ達「ウィーノス・エルフ万歳!キャルブリリィ隊長万歳!」 大広間のステージにM字開脚で吊るされての排泄行為は、ローリエリーナの尊厳を全て奪い去った。 いっそ、気が狂ってしまえば楽になれるが、ローリエリーナの強い意志がそれを許さなかった。 ________________________ 【生贄のための調教について】 誌面の都合上、詳細な描写は控える事にして、ちょうどRPGツクールXP『奈落への挑戦状2004』の調教イベントに似たようなシーンがありますので、それを参考に後は読者様のご想像にお任せしたいと思います。 ↓『奈落への挑戦状2004』ダウンロードはこちらから http://asunoeiyu.web.fc2.com/abyss2004shoukai.html ________________ ローリエリーナは、いかなる辱めを受けようとも、それにより、どれだけ誇りを汚されようと、決して自ら命を断とうとはしなかった。 このような状況においてもたった一つだけ、是が非でも叶えたい夢があったからだ。 その夢とは、最愛の妹ラヴィリーナの生存を確認する事。 ただそれだけである。 どれだけみじめな姿に貶められようとも、必死に生き抜いてラヴィリーナが生きている事を確認する。 その強い思いだけが、ローリエリーナの精神を支えていた。 ―デル地方、ラバンニックの街― この街には、カーリーという美人占い師がいる。 ________________________ カーリー 種族:人間(22歳) クラス:ウィッチ 属性:ニュートラル・グッド カーリーは強力な魔力を持つ水晶球(下級アーティファクト)を持っていて、それを使った占いはかならず当たる。 ________________________ ―カーリーの占い館の占い部屋― カーリーと、ジャスティシアー(大判官)のソーンがテーブルを挟んで座っている。 カーリー「ソーン様、このような高価なお品物、いただけません」 ソーンが差し出した高価な香水を前にして、動揺している様子。 ソーン「いえ、ミス・カーリー、どうか遠慮なさらずに受け取っていただきたい。貴女の占いのおかげで、私は大切な友人の力になる事ができたのです。このようなものでは私の感謝の気持ちの一部にしかなりませんが、受け取っていただけなければ、その一部すら表せない事になります」 ________________________ ―【回想シーン】― 以前、“アヌジックの力”を求めてこのラバンニックの街にやってきたソーンが、ちょっとした気分転換にカーリーの占い館に足を運び、そこで試しに占ってもらった事がある。 カーリー「お客様、より良い修行を行なう方法をお探しとのことですが、私の占いによりますと・・・(地図を広げる)・・・ここへ行けば、お客様の良き経験となり、お客様にとって大切なご友人を助ける力を手に入れると出ております」 ソーン「大切な友人を助ける力か・・・それは願ったり叶ったりだ」 そして出かけた冒険の末に、ソーンは魔法のランス、聖槍『悪魔退治』を手に入れた。 ソーン「おお・・・(槍の神々しさに見とれながら)これはまさしく我が友フィースにふさわしい槍だ。さっそく彼に贈ろう」 (『Wind of fate』第7話『不浄なる暗黒の使者』参照。) ________________________ ソーンは、今回の聖槍『悪魔退治』の件が嬉しく、感謝の気持ちを表そうと考え、色々なお店に行き、女性に対するプレゼントはどういったものが良いのか店員に尋ねて回った。 そうして導き出したアイテムが高価な香水だったわけだが、カーリーのとまどう様子を見ると、あまり正解とは言えないようだった。 実のところ、カーリーはその容姿から、男性客達からの人気が高く、そういった客の中には、下心で高価な贈り物をしてくる輩が少なくはなかった。 真面目そうな大判官ソーンが、そういった男性達と似たような贈り物を渡して来た事で、驚いてしまったわけである。 カーリー「え、その・・・ソーン様にそこまでおっしゃっていただき、断る事は非礼に値しますゆえ、ありがたく頂戴させていただきます」 ソーン「良かった。お恥ずかしながら、こういったプレゼントというものは初めてなのでどうして良いかわからず、ご迷惑をおかけしてしまったかと・・・」 カーリー「いえ、迷惑だなんてとんでもありません・・・」 そんなぎこちない空気のところ、カランカラン!と占い館の呼び鈴が鳴る。 カーリー「あ、お客様がいらしたみたいですわ」 スコラルの声「占い師はん!急ぎの用やさかい、おったら出てきてや!」 ナムフードゥルの声「おいスコラル、焦る気持ちはわかるが、失礼な態度に気を悪くして、占ってもらえなくなったらどうする?」 スコラルの声「わかっとる!・・・わかっとうがローリエの一大事なんや!」 ソーン「何やらただ事ならない様子。お邪魔にならないよう、私はこれで失礼させていただきます」 カーリー「ソーン様、本日はありがとうございました。ぜひまたいらしてくださいませ」 ―カーリーの占い館の入り口― 扉を開けてソーンが出てくる。 スコラル「あんたはんが占い師かいな?!これまた随分いかついご婦人さんやな〜・・・」 ナムフードゥル「おいおい・・・」 ソーン「いや、私は客だ」 スコラル「って、そこは『水晶玉の重さで鍛えられました』ゆうてボケ返すとこやろ」 ソーン「・・・ほへ?・・・」 続いてカーリーが出てくる。 カーリー「お待たせしました。私がカーリーです」 スコラル「おっと、ふざけとる場合やない!カーリーはん、頼みがあんねやけど聞いてくれへん?」 カーリー「なにやら深刻なご様子。中へどうぞ」 カーリーに案内され占い部屋へ行く。 ―カーリーの占い部屋― カーリー「・・・事情はわかりました。ではそのローリエリーナさんの居場所を突き止めればよろしいのですね」 スコラル「あんただけが頼りなんや。ああ、神様仏様カーリー様・・・」 ナムフードゥル「私からもお願いします。できるかぎりのお代を用意します」 カーリー「命に関わる一大事。全力をつくします」 カーリーが水晶球(アーティファクト)に魔力を込めると、光を放ち始める。 しばらくして、カーリーが水晶球から顔を上げる。 カーリー「場所がわかりました」 スコラル「え!?もうわかったん?!」 カーリー「確かに場所は突き止めることができました。ですが・・・あの、とても申し上げにくいのですが、敵は相当な戦力を持っているようでして・・・」 スコラル「そないな事は承知の上。なにしろあのローリエを捕らえれたんやし。なんもウチ一人で助けようなんて思てへんよ。とっておきの切り札があるんや」 スコラルは懐から一枚のカードを取り出す。 カーリー「それは・・・(そのカードが何なのか理解した表情になる)まさか・・・」 スコラル「ちょうど、こっちの商人ナムフードゥル・エールたぷたぷ・ラウルノールと一緒に遠出して手に入れたシロモノや。」 ナムフードゥル「おいスコラル、それを手に入れるためにどれだけの・・・」 スコラル「ローリエの命に代えられるか!」 ナムフードゥル「・・・ああ、(しぶしぶとした表情で)もちろんだとも・・・」 スコラル「さあ、カーリーはん。ウチらの事は心配せんで、場所教えてんか?」 カーリー「はい。エウルブ地方の南側に位置する、イコムス山脈の麓です。詳細はこの地図をご覧ください」 スコラル「ほんまおおきに!」 ナムフードゥル「ありがとうございます!お代はいくらでしょう?今は手持ちがありませんが、必ずやご希望の額を・・・」 カーリー「今は一刻を争います。お代などいつでも結構ですのでお急ぎください」 スコラル「あんた、ほんまええお人や。この恩は一生忘れんで!」 そういうと、スコラルは外に飛び出し、グリフィンに飛び乗った。 次のページへ ページ: 1/ 2/ 3/ 4/ 『運命の風』(Wind of Fate)ギャラリー へ戻る |