『運命の風』(Wind of Fate)第6.5話(外伝)へ戻る ページ: 1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 1ページ目D&D3.5edキャンペーン『Wind of fate』#7『不浄なる暗黒の使者』 エニラマルトルに戻ったフィースは、聖ナビアス教会にジェンナの捜索協力を頼みに行く。 ―聖ナビアス教会― ロベルト司祭「おお、よくぞ戻った。フィース君、悪魔退治についての報告を聞かせてくれ」 フィース「悪魔退治は成功いたしましたが、残念ながら私は今とても喜べる状況ではありません」 フィースはジェンナに化けていたドッペルゲンガーの事をロベルト司祭に話す。 ロベルト司祭「それならばこのクリスタル・ボールを使うといい。これは誰でも容易に念視ができる魔法の水晶球だ。親しい者の事ならばたとえどれだけ離れていようとスクライング(念視)する事が可能なのだ」 ロベルト司祭がテレパシー機能付きクリスタル・ボール(魔法念視装置)を用意してくれたので、フィースはその水晶球を使ってジェンナをスクライング(念視)する。 水晶球に石造りの暗い部屋が映し出される。 周りには様々な拷問器具が置かれている事から、ここが拷問部屋である事が容易に理解できる。 そして、激しい拷問を受けたと思われるジェンナが拷問部屋の壁に磔にされている様子が見える。 フィース「ジェンナさん!」 ロベルト司祭「おお!なんということだ・・・そうだ、フィース君、そのクリスタル・ボールはテレパシー機能がついている。囚われている場所を聞き出す事ができるはずだ」 フィース「(テレパシー)ジェンナさん、僕の声が届いていますか?」 ジェンナ「う・・・その声は・・・フィース殿・・・」 フィース「(テレパシー)今クリスタル・ボールを使ってテレパシーを届けています。どこに捕らえられているのかわかりますか?」 ジェンナ「イルザルシパル・ヴァレーにある砦の中・・・です。申し訳・・・ありません。不覚にも敵の術中にかかってしまいました。私を捕らえた者たちは・・・エニラマルトルへの侵攻計画を立てて・・・います・・・」 フィース「(テレパシー)その塔の場所を詳しく教えてください。声に出さずに念じてくれるだけでこの水晶球はそちらの伝言を受け取ることができます」 突然、何者かが、拷問部屋に入ってくる。 小さな角が生えた男(ティーフリング)だ。 ________________________ 【プレインタッチト(次元界の影響を受けたもの)】 “プレインタッチト(次元界の影響を受けたもの)”とは、血筋をたどっていくと来訪者(普通はフィーンドかセレスチャル)に行き着く者たち全般を指す言葉である。 先祖に超常的な存在がいることの影響は、何世代にもわたって持続する。ハーフセレスチャルやハーフフィーンドほど劇的な変化を被るわけではないが、それでも、プレインタッチトにはいくつかの特殊能力が残っている。 ここでとりあげるプレインタッチトは最も一般的なもので、アアシマールは血脈にセレスチャルの血が混じっている人間であり、ティーフリングは家系図の中にフィーンドが紛れ込んでいる。 これと決まったアアシマールやティーフリングの“典型”というものはない。独自の社会や文化を持っていることもなく、既存の他の社会・文化に溶け込んでいる。キャラクター・クラスを持っている者も多い。 【アアシマール(プレインタッチト)】中型サイズの来訪者 この者は美しい人間に似ており、穏やかで落ち着いた顔立ちと、その顔から放たれる内なる輝きを備えている。 天界の御手が触れたという栄誉を担うアアシマールはたいてい、背が高く、見目良く、概して快活である。銀の髪、黄金の瞳、不思議に鋭い眼光など、天界の血を受け継いでいることをほのめかす肉体的特徴を持っている者もいる。 ほとんどのアアシマールははっきりと善の属性を持っている。彼らは悪の勢力に抗して戦い、他の者たちが正しいことをするよう導こうと努める。時に彼らが、セレスチャルである祖先の持つ復讐と天罰の相を呈することもあるが、それはまれなことである。彼らがリーダーの地位に就いていることはまれであり、善への絶対的な献身のために独りで暮らすこともしばしばである。また、中にはさほど熱狂的ではなく、普通の人間の社会にすっかり溶け込んでいる者もいる。 【ティーフリング(プレインタッチト)】中型サイズの来訪者 この者は人間に似ているが、どことなく不安な気持ちにさせる物腰を備え、眼には意地の悪い光が宿っている。ひたいからは短い角が2本生えている。 不正直で正道をはずれ、信頼できぬティーフリングは、己の生来の性向に従い、悪の呼び声に耳を傾けることの方が多い。わずかながら生まれつきの性向を拒む者もいるが、そうした者たちも(正体がばれた時には)世間の自分の属する種族に対する感情や、どこへ行こうと付いてまわる異界的な“不浄”の雰囲気と戦い続けなければならない。 多くの者が不安をおぼえる物腰を除けば、ティーフリングの多くは人間と区別がつかない。中には小さな角や尖った歯、赤い瞳を持っていたり、かすかな硫黄の匂いを漂わせていたり、さらには蹄のある者すらいる。ティーフリングはひとりひとりが異なる姿をしているのだ。 ほとんどの人間の社会では、ティーフリングは目立たぬようにして、盗賊や暗殺者、スパイとして活動する。時に権力の座にのぼりつめるが、正体が明らかになれば直ちに追放されてしまう。 (D&D第3.5版モンスター・マニュアルより) ________________________ ティーフリングの男ウォリス「テメェッ!今何を話していた!?貴様ぁ、仲間と連絡をとっていたな!」 怒りの形相でジェンナを殴りつける。 ジェンナ「うぐっ!・・・」 ティーフリングの男ウォリスは奇妙な石を取り出す。 この石はノンディテクション(占術妨害)の魔法を発射できる魔法アイテムである。 ウォリス(ティーフリング)「んだよくっそ!ノンディテクション(占術妨害)の魔法効果時間が切れてたんかよ・・・ったく、俺もとんだミスをしたもんだぜ」 ウォリスは取り出した魔法の石でジェンナにノンディテクション(占術妨害)をかける。 その魔法効果により、フィースのクリスタル・ボールの念視は強制的に中断させられた。 ―聖ナビアス教会― フィース「ジェンナさん!・・・くっ!念視が破られた・・・」 ロベルト司祭「占術妨害の魔法か・・・残念だが、これ以上のスクライング(念視)は不可能だ・・・」 ―イルザルシパル・ヴァレーにある砦の拷問部屋― ウォリス(ティーフリング)「よぉし、二度とそんなふざけた真似をする気がおきなくなるよう、このウォリス様がたっぷりと調教してやる。覚悟しろよぉ?」 拷問部屋にウォリスの歓喜の声とジェンナの苦悶にあえぐ声が響き渡る。 ―聖ナビアス教会― ロベルト司祭「敵にはかなり強力な魔物がいると予想される。フィース君、このレストレーションのワンドを持って行きたまえ」 フィース「ありがたく使わせていただきます」 ロベルト司祭「それから、つい言う機会を逃してしまったが、デル地方の街、ラバンニックの聖ナビアス教会より君宛に大きな荷物が届いている」 フィース「デル地方から僕に荷物?」 荷物を見ると、一緒に手紙が添えられている。 フィース「ソーンからの手紙だ」 ________________________ 『ソーンからの手紙』 我が親友フィースへ フィース、君の活躍の話はデル地方にまで届いている。 “アヌジックの力”探求の冒険中に、良い物を手に入れたので君に送ろう。 これは聖槍『悪魔退治』という名の対悪魔武器(+1銀製ホーリィ・“イーヴル・アウトサイダー”ベイン・ランス)だ。まさに君にこそふさわしい槍だろう。 私も早く一人前のジャスティシアー(大判官)になれるよう精進する。 そして必ずや“アヌジックの力”を手にするつもりだ。 いつか再び君と肩を並べて戦える日が来る事を楽しみに願っている。 ________________________ フィース「ありがとうソーン。僕にとって、これ以上心強い応援はない」 フィースは、親友ソーンがくれた銀のランスを手に取り、ティーリーフ邸に向かった。 時は少しさかのぼり、フィースと別れたバンブル、アルウィン、ラヴィリーナの3人はティーリーフ邸に帰ってきた。 ―ティーリーフ邸― 玄関でディーネが出迎える。 ディーネ「おかえりなさい!お兄ちゃん、大変なの!妖精さんがお兄ちゃん達に会いに来てるの!」 アルウィン「妖精さん?」 アルウィン達はディーネに引っ張られるようにして、応接間に案内される。 3人が応接間に行くと、チャムとアンと子供達がいて、さらに・・・ チップ(ピクシー)「やあ、ひさしぶり!」 バンブル、アルウィン、ラヴィリーナ「チップ!」 白猫アルト「ニャー!(チップ!)」 チップ(ピクシー)「いやあ、あれから色々あってね。話せば長くなるんだけど・・・」 ________________________ 『チップの話』 フェイ達の仇をとってくれた3人の勇者に会うために、インヴィジビリティ(透明化の魔法)で姿を隠し、はるばるエニラマルトルにやって来たまでは良かったが、3人がどこにいるのかわからず、困っていた。 ちょうどティーリーフ邸の近くを通った時に、庭で遊んでいたビリーが投げた石がたまたまチップに当たり、痛さのあまりチップは姿を現してビリーに文句を言った。 すると、ディーネ、トレイシー、ジャン、メーラが集まってきて、ちょっとした騒ぎになり、それがきっかけで友達になった。 そこでチップが子供達に、ラヴィリーナというエルフの娘とアルウィンというハーフエルフとバンブルというドリックの3人組を知らないかと聞いたところ、ドンピシャ! というわけでティーリーフ邸で3人の帰りを待っていたのである。 ________________________ ラヴィリーナ「あたし達を探していたっていう事はまた何か事件が起きたの?」 チップ(ピクシー)「ああ、君達と別れてから僕とループ(グリッグ)はトニムの森からずっと東、イルザルシパル山脈に向かったんだけど、山脈の付近にあったフェイの集落が壊滅していたんだ。生き残ったフェイに聞いたところ、グリフォンを連れた2つ頭の巨人の仕業らしい。僕はその事を君達に伝えたくてはるばるここまで来たのさ。ループも一緒に来るように誘ったんだけど、彼はトニムの森に帰って行ったよ」 ちょうどそこへ、フィースがやって来て、ジェンナがイルザルシパル・ヴァレーにある砦に囚われている事を話した。 一行は今後の行動について話し合う。 バンブル「オイラが思うに、山脈付近のフェイの集落壊滅の件と、イルザルシパルの谷の砦の件は、何か関係があるんじゃないか?」 アルウィン「ああ、その可能性は高いな。しかしどうする?イルザルシパル・ヴァレーへ行くには、イルザルシパル山脈を越えなけりゃならない。あの山を登って越えるのは難しいぞ。山脈を避けるように回り込む手もあるけど、途方もない長旅になる」 チップ(ピクシー)「イルザルシパルの谷へ行きたいのなら山脈の抜け道を通って行くといいよ。太古の昔、たくさんの妖精達が住んでいたとても大きな鍾乳洞で、そこにある妖精の湖に住んでいるスームっていう名前のニクシーと僕は友達なんだ。彼女なら、谷にある砦の事も知っているはずさ」 アルウィン「チップ、そこへ案内してくれるかい?」 チップ(ピクシー)「オーケー。でも戦闘に参加するのは勘弁してね」 チップは姿を消したうえで、アルウィンの背負い袋に入ってついて行くことになった。 (ラヴィリーナのバッグには使い魔の白猫アルトがいるし、バンブルのバッグは身体のサイズの都合上無理がある。) ラヴィリーナ「クレープ・ビスケット出動よ!」 白猫アルト「ニャー(ブレイブ・カルテットね)」 チップの案内で、ブレイブ・カルテットはイルザルシパル山脈の麓近辺にやって来た。 魔法のテーブルクロスでヒーローズ・フィーストを食べ、あと少しで鍾乳洞の入口に到着するというところで、突然バンブルの魔剣『巨人殺し』が光を放ちはじめた。 バンブル「みんな気をつけろ!この近くに巨人がいるぞ」 一行の前にグリフィンと2体のヒポグリフを連れた2首の巨人が現れた。 チップ(ピクシー)「集落を壊滅させた“双頭巨人”エティンだ!」 ________________________ 【グリフィン】大型サイズの魔獣 この獣の体は筋骨隆々たる獅子のようで、頭と前足は巨大な鷲のものである。背中には一対の大きな黄金の羽根が生えている。 グリフィンは力強く威風あたりを払うクリーチャーで、ライオン(獅子)とイーグル(鷲)の特徴をかねそなえる。あらゆる種類の獣をとって食うが、とりわけ馬の肉を好む。 くちばしから尻尾までの長さは、大人のグリフィンで8フィート(約2.4m)に達する。雄にも雌にもたてがみはない。背中から生えた幅広い黄金の翼は、広げると25フィート(約7.6m)かそれ以上もある。体重は約500ポンド(約230kg)。 グリフィンは高所に巣を作り、鷲のようなかん高い鳴き声とともに舞い降りてきて獲物を襲う。気性が荒くなわばり意識が強いが、明らかに強い相手は避けるだけの知性も持ち合わせている。とはいえ、馬を見たならほとんど常に攻撃をしかける。腹をすかせたグリフィンから馬を守ろうとするものは、しばしば本人もグリフィンのごちそうになってしまう。 グリフィンは共通語を解するが、自分で話すことはできない。 【ヒポグリフ】大型サイズの魔獣 この獣の胸部と後半身は馬だが、前脚と翼と頭部は巨大な鷲のようだ。 ヒポグリフは一部は馬、一部はジャイアント・イーグル(巨大鷲)という、気性の荒い空飛ぶクリーチャーである。貪欲な雑食動物であり、人間も含めていろいろな餌をとって食う。 ヒポグリフはなわばり意識がまことに強く、お気に入りの狩り場や牧草地を守る時はたいそう凶暴になる。彼らのなわばは巣から約5d10マイルの範囲である。子供は大人が狩りに出かけている間、巣に留まっている。とはいえ、ヒポグリフが子供を無防備のままにしておくことは決してない――ヒポグリフの巣を見つけたということは、必ず大人とも出くわす羽目になることを意味しているのだ。 典型的なヒポグリフは体長9フィート(約2.7m)、翼を広げた幅は20フィート(約6m)、体重1,000ポンド(約450kg)。 【エティン】大型サイズの巨人 筋骨隆々たる巨人で、頭が2つついている。どちらの頭もブタ面で、ショヴェルのような下あごから、下の犬歯が突き出たさまは、猪の牙にそっくりだ。ほかの歯はどれも大きくて虫歯だらけ。髪の毛は硬い直毛で汚れほうだい、それどころか体じゅう汚れほうだいである。 “双頭巨人”とも呼ばれるエティンは、夜闇に乗じて敵を襲う、何をしでかすか予想のつかない物騒な狩人である。2つの頭を持つため、観察力が鋭く危険に敏感で、番人としても斥候としても有能である。 エティンは入浴が大嫌いなので、その皮膚はたいてい垢と汚れのために灰色の厚い革のようになってしまっている(悪臭を放っていないエティンは極めて稀である)。エティンの髪は堅い直毛で、手入れもせずに伸ばし放題にしている。大人のエティンは身長約13フィート(約4m)、体重5,200ポンド(約2.4t)になる。寿命は約75年。 エティンは独自の言語は持っていないが、オーク語とゴブリン語と巨人語の入り交じった混成語を話す。これらの言語のいずれかを話せるクリーチャーは【知力】判定(難易度15)に成功すれば、エティンと意志疎通を果たすことができる。判定は情報の断片それぞれについて1回ずつ行なうこと。意志疎通を試みるクリーチャーが上記のうち2つの言語を話せるなら難易度は10に、3つとも話せるなら難易度は5になる。エティンの【知力】は低いが、同族同士の会話に支障はない。エティンは独りきりになると、よく何時間も頭どうしでおしゃべりして過ごす。 (D&D第3.5版モンスター・マニュアルより) ________________________ バンブル「やいデカブツ!オイラが相手だ!フェイ達のかたきをとってやるぜ!」 バンブルは、特殊能力:バーバリアン・レイジを発動させ、巨人並の怪力を発揮して、“双頭巨人”エティンに斬りかかって行く。 小さな巨人VS 双頭巨人の戦いが始まった。 アルウィン「鷲獅子(グリフォン)は俺にまかせろ!」 フィース「鷲馬(ヒポグリフ)の相手は僕がしよう」 ラヴィリーナ「後方支援はまかせて!」 ラヴィリーナの弓矢による後方支援を受けながら、バンブルはエティンと戦い、アルウィンはグリフィンと、フィース&聖なる軍馬プラックは2体のヒポグリフと戦う。 バンブル「殺されたフェイ達の怨み、思い知れ!」 激怒したバンブルの魔剣『巨人殺し』が、“双頭巨人”エティンを斬り倒す。 それとほぼ時を同じくして、アルウィン達もそれぞれグリフィンやヒポグリフを倒した。 次のページへ ページ: 1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 6/ 『運命の風』(Wind of Fate)ギャラリー へ戻る |