『運命の風』(Wind of Fate)第八話へ戻る ページ: 1/ 2/ 3/ 1ページ目D&D3.5edキャンペーン『Wind of fate〜外伝〜』【登場人物】 ________________________ チャリル 種族:ウィーノス・エルフ(ダーク・エルフ) 属性:ケイオティック・グッド(混沌にして善) ダーク・エルフは生来、邪悪な心を持つ種族のはずだが、チャリルは善の心を持ち、ウィーノス・エルフの族長の家系に次女として生まれた。 『チャリル』とは竜語で『赤』の意味。 ________________________ 慈母ザマッラ 種族:ウィーノス・エルフ(ダーク・エルフ) クラス:クレリック13レベル 属性:ケイオティック・イーヴィル(混沌にして悪) ウィーノス・エルフで一番偉い人。 『マッラ[malla]』とはドラウ語で『栄光ある、誇り高き』という意味。 ________________________ リルサリッス 種族:ウィーノス・エルフ(ダーク・エルフ) クラス:スワッシュバックラー3/クレリック5 属性:ケイオティック・イーヴィル(混沌にして悪) 慈母ザマッラの長女。 慈母ザマッラの死後、ウィーノス・エルフを束ねるボスになる。 『サリッス[suliss]』とはドラウ語で『優雅さ、高貴さ』の意味。 ________________________ リルプリン 種族:ウィーノス・エルフ(ダーク・エルフ) クラス:ローグ8 属性:トゥルー・ニュートラル(真なる中立) 特別な調教を受けて育て上げられた腕利き暗殺者。 ほとんど感情を持たず、機械のように与えられた任務をこなす。 地下世界に住むウィーノス・エルフは通常は太陽の光に弱いが、リルプリンは特技:《太陽光適応》を持ち、地上の光の下でもペナルティなしで行動できる。 『プリン[plynn]』とはドラウ語で『掴む、奪う、獲る』の意味。 ________________________ ウォリス 種族:ティーフリング クラス:ローグ8 属性:ケイオティック・イーヴィル(混沌にして悪) リルサリッスに雇われている傭兵。 ティーフリングは、フィーンド(魔族)の血が流れる人間である。 『運命の風』(Wind of Fate)第7話『不浄なる暗黒の使者』と、『運命の風』(Wind of Fate)第8話『運命の戦い』に登場。 ________________________ ローム ウィーノス・エルフ(ダーク・エルフ) クラス:ウィザード3 属性:ケイオティック・イーヴィル(混沌にして悪) リルサリッスの相談役。 自分よりも弱い者をいたぶるのが大好きなサディスト。 ________________________ 【状況説明】 運命の風(Wind of Fate)第1話『嵐の前の凪』の出来事が起こるより25年前。 ―アンダーダーク(地下世界)、ウィーノス・エルフの生き残り達が住んでいる住居― 他のドラウ(ダーク・エルフ)貴族との戦争中、決戦に向けて、慈母ザマッラは魔力増強の儀式を図る。 その魔力増強方法とは出産である。(出産を迎えた慈母は強力な魔力を発揮する) そうして、次女チャリルが生まれた。 その後、決戦に勝利し、ウィーノス・エルフは全てのドラウ(ダーク・エルフ)貴族の頂点という立場を得る。 しかし、出産後間もなく、弱っている慈母ザマッラを、ティーフリングの傭兵ウォリスが暗殺。 この暗殺を企てたのは、長女リルサリッスの命令である。 こうして長女リルサリッスがウィーノス・エルフの長となる。 ________________________ リルサリッス(スワッシュバックラー4/クレリック4)「リルプリン、お前を次女チャリルの教育係に任命する。お前の持てる技術を注ぎ込み、私の手足として働く完璧な駒に育て上げよ」 リルプリン(ローグ8)「ウスタン・ザー・ドースト(仰せのままに)」 リルプリンは、完璧な教育を行なうため、地上に赴き、様々な文化の育児の資料を集め、研究した。 とりわけ、チャリルの健康管理には注意した。 健康を損ねてはその分、教育の効率が悪くなるからだ。 当然、リルプリン以外にも育児専門の者が数人ついてはいたが、時が経つに連れ、リルプリンが解雇していった。 チャリルを完璧なモノに仕上げるのは自分の使命であり、ほかの者の関与はマイナスでしかないと考えていたからである。 リルプリンにとっては、チャリルを完璧な作品に仕上げる事だけが全てだったのだ。 それから時が立ち、ちょうど10歳になったチャリルをウィーノス・エルフの儀式に連れて行く。 儀式場にはアン・ホーリィ・オーラ(善なる者に害を与える邪悪なオーラ)が、あたりに満ちている。 儀式場では、ドラウ達が淫らに乱交し、邪神の遣いであるデーモン(魔鬼)、ヨックロールを招来していた。 ________________________ 【ヨックロール(デーモン)】中型サイズの来訪者(混沌、悪、他次元界) ヨックロールは“ロルスの侍女”とも呼ばれている。アビスと全次元界において、“蜘蛛の女王”に仕えているのだ。ヨックロールは、その暗黒の主人に仕えるためにのみ存在している。彼女が命じる任務は、それがなんであれ実行する。 ヨックロールの本来の形態は、体高6フィートの悪臭を放つ粘体の塊で、強力な触手を8本持つとともに、ぎらぎら輝く赤い目を1つ持っている。しかしながらヨックロールはこの形態と、他の3つの形態の間を自由に行き来することができる。すなわち、人間かエルフ(通常はドラウ)の美しい女性、黒い大型モンストラス・スパイダー、ガスの雲。このうちガスの雲の高さはおよそ10フィートで、直径は5フィートだ。 変身はフリー・アクションであり、1ラウンドに1回行うことができる。人間かエルフの形態で鎧を着用している場合、別の形態になるとその鎧は地面に落ちる。 ヨックロールはアビサルを話す。 フォーゴトン・レルムの世界観では “ロルスの侍女”は、メンゾベランザンといったようなドラウの都市にいる母長たちと、彼女らの邪悪な女神を結ぶ、主たる接点だ。ロルスの大司祭は全員、ヨックロールを招来する方法を知っている。またヨックロールがガス化形態でいる限り、次元界間を結ぶ通信手段として機能する。 (D&D第3版フェイルーンのモンスターより) ________________________ チャリル「・・・何?ここ」 リルプリン(ローグ8)「儀式についてはまだ何も教えていませんでしたが、私自身、儀式には参加経験がなく、知識不足のため、説明のしようがありませんでした。『習うよりも慣れろ』という言葉があります。今日ここで身を持って学びなさい」 チャリル「・・・リルプリン・・・わたし・・・気持ち悪い・・・」 儀式場に足を踏み入れたチャリルは気分が悪くなり、嘔吐しながら気を失う。(善の心を持つチャリルは、アン・ホーリィ・オーラに耐えられなかったのである) リルプリン「チャリル、どうしました?」 長女リルサリッス「リルプリン!これはいったい何事だ!?」 リルプリン「不測の事態です。チャリルの身の安全のため、本日の儀式参加は中止すべきと判断します」 ヨックロール「ん?この場にふさわしくない者がいるな。そこの幼子は忌まわしい心の持ち主だ」 長女リルサリッス「おお、なんということ!」 ヨックロール「ドラウを束ねるウィーノス・エルフたるものがとんだ恥さらしだな。この落とし前、どうつけるつもりだ?」 長女リルサリッス「申し訳ありません。ただちに、この者の死を持って・・・(チャリルの方を向くが、もうすでにリルプリンが連れ去っていた)・・・あれ?チャリルはどこだ?おい!リルプリン!くっ!2人ともどこへ行った?!」 ドラウ兵士「リルサリッス様、たった今目にもとまらぬ速さで去って行きました」 長女リルサリッス「ちっ!あのウェール(愚か者)どもめ!!おい、貴様!代わりにその身を捧げよ!」 ドラウ兵士「え?!そんな・・・!うわあああぁぁぁっ!」 儀式場にドラウ兵士の断末魔の叫び声が響き渡る。 ―ウィーノス・エルフ玉座の間― 玉座にリルサリッス、その横に側近ウォリス(ティーフリング)。 一段下がったところに相談役のローム(3レベル・ウィザード)。広間にはドラウ1レベル・ウォリアー6人。 リルサリッスと対峙する位置にチャリルと教育係のリルプリン。 長女リルサリッス「ええい!先日はとんだ恥をかかせてくれたな!」 リルプリン「申し訳ありません」 ウォリス(ティーフリング、ローグ8)「クク・・・」 長女リルサリッス「何がおかしい!」 ウォリス(ティーフリング)「おっと、いや失礼・・・ククク」 長女リルサリッス「リルプリン、この十年間、貴様は何をやっていた!聞けば、昨今では他の養育係を全て解雇し、一人でチャリルにつきっきりだったというではないか!」 リルプリン「・・・」 ローム(ウィザード)「やれやれ、パーフェクト・マシーンとうたわれたリルプリンどのが、つきっきりで教育した結果がこれとは、実に嘆かわしいですなあ」 リルプリン「・・・」 ローム「それにしても善の属性をもって生まれてくるなど前代未聞の出来事。私が思いますに、チャリル姫殿下を神への生け贄として捧げる事でこのたびの不始末の落とし前をつける他ありませんな。それも今までに例を見ないほどの、こう凌辱的で、魅惑的で、究極にエロティックで、かつ残虐的で芸術的な処刑を演出する必要があります。(チャリルに近寄り、顔を覗き込む)」 チャリル「(ロームからちょっと引いて、リルプリンの腕にしがみつく)・・・リルプリン」 リルプリン「(そんなチャリルの肩を支える)・・・」 ローム「(チャリルに近づいて行き)フフフ・・・脳足りんの貴様でも、少しは状況が理解できているようだな小娘・・・いや雌ブタ。お前の顔を絶望と苦悶に歪ませてやるぞ」 長女リルサリッス「ローム、貴様ごときが仮にも我が姉妹に対し、口が過ぎたな」 ローム「はっ!(ロームは、反抗できない者を一方的に罵るというサディスティックな感情を抑えられず、つい己の立場の限界を超える発言をしてしまったことに気付き、即座に両手を前でクロスさせ、地下世界共通の無抵抗のポーズをとり、後ずさる)申し訳ありません。これは言葉の・・・」 リルサリッスは素早く玉座から立ち上がると、抜き放ったレイピアでロームの心臓を一突きした。 ローム「がはぁっ!」 ロームは見事に胸を貫通したレイピアを驚きに満ちた目で見つめながら絶命した。 ウォリス(ティーフリング)「クックック・・・いるんだよなあ、テメエを棚に上げて、人を責める時に、有頂天になる野郎って・・・」 長女リルサリッス「リルプリン、チャリルの始末はお前の手で行なえ。わたしの目の前で」 リルプリン「・・・」 長女リルサリッス「さあ、やれ」 リルプリン「・・・」 長女リルサリッス「どうした?聞こえなかったのか?」 リルプリン「・・・リルサリッス様。此度の出来事は、まさしく前代未聞。ただ殺すのは簡単ですが、この事実は、高貴なるウィーノス貴族の歴史に、傷を残す事になりかねません」 長女リルサリッス「・・・何が言いたい?」 リルプリン「この件を利用し、全てを意図的なものだった事にするというのはいかがでしょう?同じく前代未聞の出来事でも、『前代未聞の失敗』と、『意図的な破天荒』では、意味が変わってきます」 長女リルサリッス「利用?」 リルプリン「はい。善なる信仰の力は、キュア(治癒)呪文の任意発動を可能とします。それは、我々の信仰呪文とは正反対の力ゆえ、利用価値があります」 長女リルサリッス「バカな!我が姉妹を異教徒にして汚名を上塗りするというのか!」 ウォリス(ティーフリング)「他の神の力すら利用する・・・か。ハハハ、確かにこりゃあ前代未聞だ!でもそれだけに、『失敗』を、『意図的な非道』に塗り替えられるってわけだ」 長女リルサリッス「しかし、ドラウを受け入れ、かつ毒さぬ信仰があるはずがない」 リルプリン「私の地上での行動範囲に愛と美の女神ミナスの寺院があります。いかなる者にも分け隔てなく慈愛を与え、かつ、他の信仰への敵対意識を植えつけない唯一の信仰です。そこを利用し、かならずやチャリルを、我らがウィーノスの『異例の力』として育て上げてご覧にいれましょう」 長女リルサリッス「通常では得られない力を手に入れるチャンスをみすみす逃すのは愚か者のする事・・・よかろう。すぐにでも地上へ旅立て」 リルプリンはなぜ、こうまでして、チャリルの処刑を拒んだのか、自分でもよくわからなかった。 リルプリンは今まで、どのような指令に対しても一度たりと疑問をもったことなどなかったし、ましてや反論し、自らの意見を提案するなど絶対にありえなかった。 しかし、この件だけは、こうせずにいられなかった。 それはリルプリンにとって、今まで、チャリルに費やしてきた10年間を無駄にしたくなかったからだろうか? 普通に考えれば、長寿のドラウにとって10年などたいした時間ではない。 しかし、無感情とはいえ、完璧さを追求するというプライドだけは人一倍のリルプリンの事である。 たった10年だろうと、自分の仕事を無駄にしたり、ましてやこれから先の完璧な作品の完成を諦めるわけにはいかないと考えてもおかしくはないが、真相は誰にもわからない。 もしかしたらこの時、すでに女神ミナスの力が、チャリルを守護していたのかもしれない。 ________________________ 次のページへ ページ: 1/ 2/ 3/ 『運命の風』(Wind of Fate)ギャラリー へ戻る |