『運命の風』(Wind of Fate)第5.5話(外伝)へ戻る ページ: 1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 1ページ目レッド・ドラゴン退治から2週間が経った。バンブル、アルウィン、ラヴィリーナ、フィースの4人は行きつけの酒場『ヘブンズゲート』で今後の活動について話し合う事にした。 アルウィン「おそらく赤竜フレイムスケイルは敵の手駒の一つにすぎないだろう。真の黒幕はもっと強大な敵、ウィーノス・エルフの末裔だ。いつしか、このエニラマルトルにまで奴らの魔の手が伸びてきたとしたら・・・」 と、そこへ一人の見知らぬドリック族の男性が話しかけてくる。 大都市エニラマルトルの近くにあるドリック族の集落の長ブラスコ氏である。 ブラスコ(エキスパート3)「私はブラスコと申します。あなた方が、凶悪なレッド・ドラゴン“フレイムスケイル”を退治した『ブレイブ・カルテット』ですね」 ラヴィリーナ「グレープ・マスカット?」 白猫アルト「にゃー(ブレイブ・カルテットだよ。勇敢な4人組っていう意味さ)」 バンブル「ブレイブなんたらってオイラ達の事を言っているのかな?いつの間にそんな呼び名が?」 アルウィン「なんでもハバック店長がそう名づけたそうだよ」 フィース「ブラスコさん、私達に何か御用でしょうか?」 ブラスコ「実は私どもの村の近くにバグベアが現れまして。腕に自身のある若者達が討伐隊を結成してバグベア退治にでかけたのですが、それっきり帰ってこないんです」 ____________________________________ 【依頼内容】 ドリック族の若者達の安否確認とバグベア退治。 報酬は、金貨400枚+その際に入手した宝物。 ____________________________________ バンブル「オイラと同じドリック族が困っているとあっちゃ、放っておけないぜ」 アルウィン「ああ、もちろん引き受けるさ」 ラヴィリーナ「フルーツ・バスケット出動!」 白猫アルト「にゃー(ブレイブ・カルテットだよ)」 一行は、その依頼を引き受け、さっそく出かける。 その際に全員トラヴェル・クローク(旅の間の食事とテントに困らなくなる便利な魔法の外套)を購入。 ____________________________________ 【トラヴェル・クローク(旅の外套)】 この灰緑の軽いクロークは、野外を旅する際に発生するある種の災害や不快から着用者を守る。 着用者は、あたかもエンデュア・エレメンツ(冷気)の呪文の影響を受けたかのように、[冷気]への抵抗を得る。 これに加えてこのクロークは降水を弾くため、このクロークで覆われているからだの部位(頭から膝まで)は乾燥状態を保つ。 これに加えて着用者は1日3回、ポケットの中の1つに手を突っ込んで、保存食を取り出すことができる。 別のポケットからは、蓋付き1クォート(946ミリリットル)の金属製ビンを1本取り出すことができる。 この中には冷たい純水か、砂糖入りの熱い紅茶のいずれかが入っている。 このビンは1日につき、2ガロン(7.57リットル)までの液体を作り出すことができる。 このビンは、クロークのポケットに戻された時にのみ中身が補充される。 クロークや着用者から離れた場合、魔法能力を持たない。 最後に、1日1回着用者が合言葉を唱えると、トラヴェル・クロークは大きくなって1人用テントになる。 (フェイルーンの魔法より) ____________________________________ フィースは愛馬プラックに騎乗し、残り3人と白猫1匹はアルウィンのマウントの呪文(魔法の馬を出現させる呪文)で召喚したライト・ホースとポニーに乗って行った。 ―ドリック族の村― 村にはポニーやドッグ(犬)がたくさんいる。 身体が小さいドリック族の戦士達の騎乗用動物としてウォーポニーやライディング・ドッグを飼育しているのである。 その他に荷物運び用のドンキーなどがいる。 ____________________________________ 【ポニー(小馬)】中型サイズの動物 体高5フィート(約1.5m)未満の小さなホースで、乗り手を乗せたまま戦闘を行なうことはできない。 【ウォーポニー(軍用小馬)】中型サイズの動物 ウォーポニーは力と攻撃性が高くなるように交配されており、ライト・ウォーホースに似ている。 (D&D第3.5版モンスター・マニュアルより) 【ドッグ(犬)】小型サイズの動物 体重が20〜50ポンド(約9〜23kg)ほどのイヌ科の動物。 【ライディング・ドッグ(乗用犬)】中型サイズの動物 この区分にはコリーやハスキー、セント・バーナードなどの使役犬を含む。 (D&D第3.5版モンスター・マニュアルより) 【ドンキー(ロバ)】中型サイズの動物 この耳の長い、ホースに似たクリーチャーは足取りが確かで頑丈である。 (D&D第3.5版モンスター・マニュアルより) ____________________________________ やたらとじめじめして熱い場所なので、ラヴィリーナは旅人の服から比較的涼しい平民の服に着替える。 本来はイスリルル族の魔法の腰布一丁になれば、エンデュア・エレメンツの魔法効果で体温快適なのだが、世間の常識を逸脱したスタイルなため、ラヴィリーナはトニムの森以外ではその格好にはならない事にしている。 ブレイブ・カルテット一行は、魔法のテーブルクロスを使い、ヒーローズ・フィースト(英雄達の饗宴)を食べると、さっそくアルウィンとラヴィリーナが、レンジャーお得意の特技:〈追跡〉を駆使して、ドリック族の若者達の足跡を追跡する。 数時間の追跡により、洞窟の入口を発見する。 アルウィン「どうやらここに入って行ったらしいな」 ラヴィリーナ「でも、バグベアらしき足跡はここには見当たらないわ」 一行はとりあえず若者達の足跡を追って中に入る事にした。 アルウィンは、地面の土を物質要素としてロング・ストライダー(健脚)の呪文を唱える。 すると入口の近くにある林から、ジャイアント・ビー(巨大蜜蜂、中型サイズ)とジャイアント・ワスプ(巨大蜂、大型サイズ)が襲いかかってきた。 ____________________________________ 【ジャイアント・ビー(巨大蜜蜂)】中型サイズの蟲 何倍も大きくなるものの(体長約5フィートっまで成長する)、ジャイアント・ビーはその小さな同類とほとんど同じように振舞う。 ジャイアント・ビーは自分自身、およびその巣を守るとき以外は攻撃的ではない。 毒(変則):致傷型、頑健・難易度11、初期ダメージ・予後ダメージ=1d4【耐】。 他のクリーチャーを刺すのに成功したジャイアント・ビーは針を抜き取る際にその針をクリーチャーの体に残す。そしてそのジャイアント・ビーは死ぬ。 (D&D第3.5版モンスター・マニュアルより) 【ジャイアント・ワスプ(巨大蜂)】大型サイズの蟲 このクリーチャーは飢えていたり脅かされると攻撃を行ない、その犠牲者が死ぬまで針を突き刺す。ジャイアント・ワスプは死んだり無力化された状態になった相手を巣に持ち帰り、これから孵る子供たちの餌として蓄えておく。 毒(変則):致傷型、頑健・難易度14、初期ダメージ・予後ダメージ=1d6【敏】。 (D&D第3.5版モンスター・マニュアルより) ____________________________________ バンブル「うわっ!なんてでっかい蜂だ!」 一瞬驚いたものの、バンブルは即座に反応し、魔剣『巨人殺し』でジャイアント・ビー(巨大蜜蜂)を一刀両断する。 人間よりもずっと大きな身体を持つジャイアント・ワスプ(巨大蜂)は、一筋縄ではいかない頑丈さを誇るが、フィースの炎の剣、軍馬プラックの蹄による蹴り、ラヴィリーナの弓矢を立て続けにくらい、よろけた隙をついて、アルウィンのバスタード・ソードによる『強打(力を込めて大ダメージを叩きだす特技)』が決まり、あっけなく撃破された。 ―洞窟― 洞窟の奥に進むと、3人のドリック族の死体が集められて山になっている。 その上には、2匹のジャイアント・ボンバディア・ビートル(巨大ホソクビゴミムシ)がいて、死体に卵を産みつけている。 ラヴィリーナ「そんな、ひどい・・・」 アルウィン「くっ・・・間に合わなかったか」 さらにジャイアント・ファイアー・ビートル(巨大ホタルコメツキ)3匹がその奥にいるのが見える。 蟲達はバンブル達を見ると、巣を守るため、襲いかかってきた。 ____________________________________ 【ジャイアント・ボンバディア・ビートル(巨大ホソクビゴミムシ)】中型サイズの蟲 ジャイアント・ボンバディア・ビートルは主に腐肉や屑肉を餌とし、そんなものを集めて作った山の中に巣をつくり卵を産みつける。ジャイアント・ボンバディア・ビートルは体長約6フィート(1.8m)である。 ジャイアント・ボンバディア・ビートルは他のクリーチャーに何の興味も持たない。彼らは通常、自分自身、巣、卵を守るためにのみ戦う。 酸の噴霧(変則):攻撃を受けたときや平穏を乱されたとき、1ラウンドに1回、ジャイアント・ボンバディア・ビートルは10フィートの円錐型に[酸]の霧を放出することができる。円錐の中にいるものは頑健セーヴ(難易度13)に成功しないと1d4+2のダメージを受ける。 (D&D第3.5版モンスター・マニュアルより) 【ジャイアント・ファイアー・ビートル(巨大ホタルコメツキ)】小型サイズの蟲 この光を放つ夜行性の昆虫は鉱夫や冒険者に珍重されている。ジャイアント・ファイアー・ビートルは眼の上にそれぞれ1つずつ、赤く光る2つの発光腺を持っている。この発光腺の明りはこの甲虫から取り出してから1d6日続き、10フィート半径をだいたい円状に照らす。ジャイアント・ファイアー・ビートルは体長約2フィート(約60cm)ほどである。 (D&D第3.5版モンスター・マニュアルより) ____________________________________ ラヴィリーナの魔法の矢のワンド、軍馬プラックの蹄攻撃、アルウィンの特技:強打の活躍で蟲達を退治する。 バンブル「オイラの同胞達・・・仇はとったぞ」 フィース「せめて安らかに眠れるよう埋葬しよう」 洞窟の先は行き止まりになっていた。 アルウィン「やはりここはバグベアの住処ではないようだ」 白猫アルト「ニャー(ドリックの若者達は、バグベアを追いかけている最中に、誤って蟲の住処に入り込んでしまったんだね)」 ラヴィリーナ「こんな事を繰り返す事がないよう、バグベアを探しましょう」 ブレイブ・カルテット一行は、いったん入口まで戻り、今度はバグベアの足跡を探す。 アルウィンとラヴィリーナが特技を生かして追跡した結果、先ほどの洞窟から少し離れたところにもう一つ洞窟を発見した。 アルウィン「バグベアの足跡が洞窟の中に続いているぞ」 フィース「この洞窟は狭いな。プラックは外で待機していてくれ」 聖なる軍馬プラック「ヒヒ〜ン!」 ―バグベアの足跡がある洞窟― (サブシナリオ『テガの魔法専門店』) しばらく洞窟を進んでいると、壁に見るからに最近とりつけられたと思われる簡素な扉を発見する。 開いたままのその扉の上の看板には『テガの魔法専門店』と書いてある。 ____________________________________ 【シナリオ裏設定】 バグベアのウィザード、テガルヨクトクが経営するテガの魔法専門店は移動型の店舗で、かなり誇張された不思議な力を持つアイテムを、好奇心が強くてだまされやすい人々に売りつける。 テガの店が移動型なのは、彼が再来する客をあまり歓迎しないからだ。 テガは盗賊兼詐欺師であり、自分の欲得を満たすためにのみ働いている。 テガのバットの使い魔(ヴェリー・アーリー・テルズ)は、専門店に通じる通路にぶら下がっている。 客(または犠牲者)になりそうな者がやって来るのを見ると、店の中に飛び込み、主人に知らせる。 ____________________________________ ラヴィリーナ「魔法専門店だって。ねえ、入ってみようよ」 店の中には、カウンターや展示品テーブルが入り乱れ、鍵のかかったガラスケースの中には、ポーションやワンドなどの品物が並べられている。 カウンターの向こうでは、毛深いバグベアがせっせと仕事をしている。 彼は子供の落書きにしか見えない粗雑な星と月が描かれた不思議なエプロンを着けている。 バグベアは一行が来た事に気づくと、声をかけてくる。 テガルヨクトク(バグベア、ウィザード5)「テガの魔法専門店へようこそ!当店では、溢れんばかりのポーション、山なすロッドや、様々な巻物、立ち並ぶスタッフ、数え切れない魔除けの数々を取り揃えております!まだお持ちでない魔法の品々をお探しなら、ぜひともテガの店をご覧ください!」 バンブル「へ?あ、いやどうも・・・いったいどうなっているんだ?」 アルウィン「やけにフレンドリーなバグベアだな・・・」 ラヴィリーナ「(売り物を見ながら)わぁ、色々な物が売ってるぅ」 フィース「ここはディテクト・イーヴル(邪悪の感知)で・・・」 フィースが、パラディンの特殊能力:ディテクト・イーヴルを発動しようとした途端、急にテガが話しかけてくる。 テガルヨクトク「お客さん、とても素晴らしい鎧をお持ちですね。その大切な鎧を錆びのモンスターから守る素敵な魔法アイテムがあるのですが、いかがでしょう?」 フィース「(ディテクト・イーヴルの発動をやめる)え?あのラスト・モンスター対策のアイテム?」 フィースは、赤竜フレイムスケイルのアジトに向かう途中に出会ったトロルが連れていた2匹のラスト・モンスターの事を思い出す。 (『Wind of fate』第5話『集いし4つの力』の『トロルとペット達』参照) そして、コカエプ村のアングレブの屋敷で初めてラスト・モンスターを見た事も思い出した。 (『Wind of fate』第4.5話『追い風に吹かれて』参照) フィースが今着ているアダマンティン製の魔法の甲冑は、ジェンナと一緒に冒険した時に手に入れた物で、思い出深くとても大切なため、ラスト・モンスターに壊されるのは是が非でも避けねばならないと考えた。 フィース「本当にそんな良い物があるのかい?」 テガルヨクトク「はい、それはもう上等な代物があります。ささ、どうぞこちらです。ちょうど今、店の倉庫に保管してあるので一緒に来てください」 テガルヨクトクはカーテンを上げ、店の奥に来るようフィースに向かって手招きする。 フィース「本当かな?もし本当なら今後心強い。行ってみよう」 半信半疑でついていく。 アルウィンは店の品を怪しんで、自分なりに鑑定している。 どう見ても高品質には見えない安っぽい剣に『フレイミング・ロングソード』と書かれた商品札が付けられているのを発見し、インチキ商品だと疑う。 ラヴィリーナは物珍しそうに品々を見ている。 バンブルは、バグベアに誘われ、カーテンの奥へ入っていくフィースに気付く。 バンブル「ん?なんだろう?トイレでも行くのかな・・・って、んなわけないか」 バンブルはフィースの後をつける。 フィースはテガの案内で30フィート(約9m)ほど通路を進み、扉にたどり着く。 テガルヨクトク「どうぞ、この奥にお入りください」 フィースを倉庫に招き入れる。 倉庫の中には色々な物が置かれている。 フィース「店にあれだけの物がありながら、倉庫にもたくさんの物があるな・・・」 テガルヨクトク「馬鹿め!ウォー・マグ・ファ・ド・ウル・アクト・アーツ!」 突然、テガルヨクトクはマジック・ミサイルをフィースに向けて放つ。 フィース「(3本の魔法の矢がフィースに刺さる)うっ!いきなり何をするんだ!騙したな!」 倉庫にはテガルヨクトクの手下のバグベアが3体(スリック、バラス、ロバート)隠れていて、フィースに襲いかかってきた。 テガルヨクトクは、頑強な全身甲冑を着た騎士さえ先に袋叩きにして倒してしまえば、残りのエルフどもやチビ助は楽勝に倒せると考えていたのである。 バンブル「野郎!やっぱり悪い奴だったのか!食らえ!」 フィースの後をつけていたバンブルは即座に参戦し、スリック(手下のバグベア1人目)をたった一撃で斬り倒す。 フィース「半分は疑っていたが・・・不覚!」 フィースは反撃してテガルヨクトクに斬りつける。 バラス「よくもスリックを!」 バラス(手下のバグベア2人目)はバンブルに突撃して手傷を負わせる。 こうして、狭い倉庫での乱戦が始まった。 アルウィン「バンブル、フィース!」 ラヴィリーナ「すごい物音がしたけどどうしたの?」 白猫アルト「ニャニャー(値切りの交渉で喧嘩でもしているのかな?)」 その騒ぎを聞きつけたアルウィンとラヴィリーナは、カーテンを上げて通路を通り、駆けつける。 アルウィン「VIPルームにしては、華やかさに欠けるな!」 アルウィンは華麗な剣さばきでロバート(手下のバグベア3人目)を斬り倒す。 ラヴィリーナ「マジック・ミサイル・ワンド発射!」 ラヴィリーナのワンドから、5本の魔法の矢が飛び出し、テガルヨクトクに命中する。 白猫アルト「ニャーっ!(僕の相手はお前か!)」 アルトは、倉庫の中の箱を飛び移り、天井にぶら下がっているバット(蝙蝠)、テガルヨクトクの使い魔ヴェリー・アーリー・テルズに飛びかかる。 使い魔ヴェリー・アーリー・テルズ「キイィーッ!」 ____________________________________ 【バット(コウモリ)】微小サイズの動物 バットは夜行性の空を飛ぶ哺乳類である。 (D&D第3.5版モンスター・マニュアルより) ____________________________________ テガルヨクトク「クソ!こんなはずじゃ・・・」 アルウィンの剣術とラヴィリーナの魔法の矢のワンドと白猫アルトが加わり、間もなくしてバグベア達をやっつける事ができた。 次のページへ ページ: 1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 『運命の風』(Wind of Fate)ギャラリー へ戻る |