『運命の風』(Wind of Fate)第三話へ戻る ページ: 1/ 2/ 3/ 4/ 1ページ目D&D3.5edキャンペーン『Wind of fate』21日目 イスリルル族の集落に向かう途中、ラヴィリーナが姉のローリエリーナと別れた場所で、近辺を調べたが、これといった形跡はなかった。 悲しみの色を隠せないラヴィリーナ。 しかし彼女は、アルウィンとバンブルも同じ境遇である事を思い、いつまでも悲嘆にくれているわけにはいかないと、気力を奮い立たせる。 ―イスリルル族の集落跡地― 集落は見るも無残な有様だった。 建物は全て崩壊し、あたり一面焼けただれ、ここで惨殺が行なわれた事が容易に理解できる。 ラヴィリーナはかつて自分の家があった場所に駆け寄る。 その近辺は何かとてつもない大爆発が起きたかのような跡地になっていた。 そして大勢のモンスター達の焼死体の残骸の中に父エイルマーと母メルリーナの遺体の一部と思しき物を発見する。 ラヴィリーナ「お父さん、お母さん!」 ほとんど原型をとどめていない状態だったが、父がいつも身に着けていた装備の破片から、両親の遺体だと解った。 ラヴィリーナは力なく崩れるようにその場に倒れこみ、今まで抑えていた感情を解放した。 アルウィン&バンブル「ラヴィ・・・」 かける言葉が見つからず、ただ見守る2人。 白猫アルト「ニャー(ラヴィ、僕にはこんな時に言ってあげられる言葉なんてない。アルウィンもバンブルもきっと同じ気持ちだよ)」 ラヴィリーナ「アルト・・・」 白猫アルト「ニャニャー(でも、今君がするべき事だけはわかる。集落のみんなを手あつく葬ってあげよう)」 ラヴィリーナ「うん。ありがとうアルト」 アルウィンとバンブルはラヴィリーナとアルトのやりとりを見て(猫が何を言っているかは聞こえないが)、ラヴィリーナが元気づけられた事を察した。 みんなでイスリルル族の人々を手あつく葬る。 ピクシーのチップも小さい身体でありながらもせいいっぱい手伝ってくれた。 チップ(ピクシー)「ラヴィリーナ達は、ぼくの仲間達のカタキをとってくれた恩人だからね。恩返しできるならなんでもするよ」 そんな一行に声をかけてくる者がいる。 身長約45pほどの超小型サイズのフェイで、人間のような上半身、コオロギのような下半身を持っている。 超小型サイズのフェイ「チップ?チップじゃないか?」 ____________________________________ 【グリッグ】超小型サイズのフェイ この超小型サイズのものは、人間のものに似た頭と胴体と両腕に、コオロギのものによく似た翅と触角と両足を持っている。 グリッグはイタズラ好きで陽気な種族である。彼らは自分たちより大きなクリーチャーを恐れることはなく、そうしたものたちにイタズラを仕掛けて楽しむ。好きなイタズラには、食糧を盗む、テントを倒す、ヴェントリロキズムを使って物体をしゃべらせる、などがある。 グリッグは長い距離を跳躍することができる。彼らは明るい青色の肌、木々の緑の髪、茶色く毛深い脚を持ち、普通はチュニック(胴着)か、小さな宝石のボタンが付いた明るい色合いのヴェストをまとう。彼らは身長1と1/2フィートほど(約45p)、そして体重は1ポンドほど(約0,45s)しかない。 グリッグは森語を話す。共通語を話すものもいる。 (D&D第3.5版モンスター・マニュアルより) ____________________________________ チップ(ピクシー)「ループ!無事だったんだね」 ループ(グリッグ)「イスリルル族に助けてもらおうと思ってきたんだけど・・・ボクが来た時にはもう、この有様だったよ。ところでチップ、連れの人達は?」 チップ(ピクシー)「勇者様ご一行さ。ぼくらの集落を襲った連中を全部やっつけてカタキをとってくれたんだ」 ループ(グリッグ)「本当かい?それはすごい」 バンブル「へへ、勇者様だなんて照れるなあ。オイラはイクス村から来たバンブル。腕にはちょいと自身があるけど勇者は大げさだよ」 アルウィン「俺はアルウィン、イクス村から来たレンジャーだ」 ラヴィリーナ「あたしはラヴィ、ラヴィリーナ・イスリルルよ」 白猫アルト「ニャーにゃにゃにゃ〜(えっへん!そして僕がラヴィの相棒、天才猫のアルトさ)」 ループ(グリッグ)「ありがとう。君達は我々スプライトにとっての英雄だよ。ラヴィリーナ・・・君はイスリルル族なんだね。残念ながら集落はこんな事になってしまったけど、君が我々の敵討ちを果たしてくれた事は、イスリルル族が誇り高き森の守護者である事の証だよ」 ラヴィリーナ「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいわ」 チップ(ピクシー)「ぼくはこれからループと一緒にフェイ族の新たな仲間達を捜しに行くよ」 バンブル「オイラ達と一緒に街へ来ないか?」 チップ(ピクシー)「それは楽しそうだね。でもぼくは遠慮しておくよ。昔、ぼくの父が街へ行った時、ちょっとイタズラをしただけでひどい目に遭わされたって言っていたからね」 一行はチップ達と別れ、エニラマルトルへの帰路についた。 23日目 イスリルル族の集落跡を出て2日、スギル村に立ち寄る。 ラヴィリーナ「ねえ見て、大きな牛さんがいっぱい」 アルウィン「スギルは、大きな農場を持つ事で有名な村なんだ。でもなんだか様子が変だな。牧場の囲いがひどい壊れ方をしている」 バンブル「ああ、それに村人達が皆暗い表情をしていると思わないか?」 ―スギル村― (サブシナリオ『ヒル・ジャイアントの奇行』) 一行は村の宿屋に行き、そこで話を聞いてみる事にした。 宿屋の主人「実は一昨日、3人の丘巨人がやって来まして、そいつらが農場を襲って牛を食べるんです。ひき続き、昨日もやられました。牛はこの村の大切な収入源だというのに・・・ああ、このままでは・・・」 アルウィン「巨人達の事を詳しく話してください。俺達でなんとかできるかもしれない」 バンブル「おうよ、なんてったってこっちには魔剣『巨人殺し』があるからな」 アルウィン「たとえ、その魔剣をもってしても、3体のヒル・ジャイアント(丘巨人)を同時に相手にするのは、今の俺達には分が悪い。だからといって、ヒル・ジャイアントに交渉を持ちかけたとしても、牛達を目の前におとなしく帰ってくれる可能性は低いだろうな。できることなら罠をはって各個撃破したいところだが・・・」 宿屋の主人「そういえば巨人達の様子が少し変なんです」 バンブル「変?」 宿屋の主人「巨人達は全員やたらとやせ衰えていて、そのうち1体はほとんど目が見えないようでした。まるで重い病にかかっているといった感じなんです。村の物知りが言うにはミイラの腐敗病の症状に似ているとか・・・」 ____________________________________ 【ジャイアント】 ジャイアント(巨人)は体も大きければ力も強い。だから、たまたま通り道にあった運の悪いものをぶち壊す腕前といったら大したものだ。 ジャイアントは粗野で愚かだという評判で、それも嘘ではない(特に悪のジャイアントについては)。大方のジャイアントは、何を解決するにも、もっぱらすさまじい腕力に頼る。腕力でどうこうできない問題など、気にするほどのものではないと思っているのだ。ジャイアントは普通は狩猟と襲撃によって、自分より弱いクリーチャーから取れるだけのものを取って暮らしている。 ジャイアントはみな巨人語を話す。【知力】値が10以上のものは共通語も話す。 【ヒル・ジャイアント】大型サイズの巨人 ヒル・ジャイアント(丘の巨人)は自分勝手でずる賢い乱暴者であり、狩猟と襲撃によって生きている。肌の色は淡褐色から濃い赤茶色までさまざま。髪や目は茶色か黒である。獣皮を雑に加工した、毛のついたままのものを、何枚も重ねて着ている。 服を洗ったりつくろったりするよりは、むしろ古いものがすりきれてきたら上に新しいものを重ね着するほうを好む。 大人で身の丈およそ10フィート半(約3.2m)、体重1100ポンド(約0.5t)ばかり。長ければ200年ほども生きる。 (D&D第3.5版モンスター・マニュアルより) ヒル・ジャイアントの属性はしばしばケイオティック・イーヴィルである。 ____________________________________ 一行は牧場で巨人達を待ち伏せする事にした。 やがて、3体のヒル・ジャイアントが重そうな足取りで姿を現した。 1体目(名前はアタカヌム)は、脂ぎってもつれた長い髪をしており、胸にはひどい傷跡がある。 さらに、左腕にも深い刺し傷が2箇所あり、その周囲が赤く腫れ上がっているのがはっきりわかる。 見えている身体のほかの部分にもやつれた様子があり、皮膚が乾燥してぼろぼろはがれ落ちている。 2体目(イムネフ)は、くしゃくしゃの赤毛だ。 彼にも1体目と同じ感染の兆候がいくつか見られる。 彼の身体も皮膚が乾燥してはがれ落ちており、武器を持っていない方の手で何度も身体のあちこちを掻きむしっている。 彼は、輝くガントレットを身に着けており、まるで溺れかけている人が救命具にすがりつくような感じで、クラブを握り締めている。 3体目(アスケウ)は、頭がほとんどはげ上がり、残った髪もまばらで、眼が曇っているために顔つきも不機嫌そうだ。 彼は焦点を合わせようとするかのように、あるいはひどい悪夢から抜け出そうとしているかのように、曇った瞳をじっと凝らしている。 彼はダブダブのズボンを着ているだけなのに、ひどく汗をかいている。むき出しの胸や腕には汗が光っている。 実は3体のジャイアント達は、4日前に近くの墓場をうろついている時、偶然ミイラのガーディアンに出くわした。 ____________________________________ 【シナリオ裏話】 不運なアタカヌム(1体目)は、現在、激しくミイラ腐敗病を患っている。 しかも、彼は赤腫れ病にも罹っている。 ミイラ腐敗病が4日以上続き、赤腫れ病が3日以上続いたために【耐久力】が合計で13点失われ、【筋力】が合計で4点失われている。 HP:30 “赤毛”のイムネフ(2体目)もミイラ腐敗病にかかっているが、さらに彼はミイラを倒した戦利品として一対のガントレットを手に入れた。 だが、それはガントレッツ・オヴ・ファンブリング(呪われたアイテム)だったので、【敏捷力】−2のペナルティを受け、ラウンドごとに50%の確率で武器を落とす。 ミイラ腐敗病が4日以上続いたために【耐久力】が合計で12点失われている。 HP:30 アスケウ(3体目)はミイラ腐敗病にはかかってないが、彼はその地方に住むナイト・ハグに悩まされている。 彼は不断の魔鬼熱のためにいつも汗をかいており、それが3日以上続いたために【耐久力】が7点(1点は恒久的に)失われている。 さらにナイト・ハグの夢中憑依が、追加の1点【耐久力】の恒久的損失をもたらしている。さらに困ったことに彼の白内障は日ごとに悪化しており、今朝、自分の服を探すのにうんざりしたので、だぶだぶのズボンと帽子だけを身につけている。 そのため、アスケウは攻撃に30%の失敗確率を持っている。 HP:54 ____________________________________ アルウィン「3人まとまっているな・・・まずは遠距離から・・・」 突然、バンブルの持つ魔剣『巨人殺し』が光を放ち始める。 バンブル「ん?何だか魔剣が光始めたぞ?」 ラヴィリーナ「ああっ!巨人達がこっちを見ているわ!」 白猫アルト「ニャー!!(しまった!剣の光で気付かれたんだ)」 バンブル「うわっ!こっちに向かってくる!」 ラヴィリーナ「マジック・ミサイル・ワンド発射!」 不運なアタカヌムに5本の魔法の矢が突き刺さる。 アルウィン「一番右側のヤツは目がよく見えないようだから、後回しだ!」 アルウィンとバンブルは、“赤毛”のイムネフ(2体目)に斬りかかる。 アルウィンのバスタード・ソードが、イムネフの身体に傷をつける。 “赤毛”のイムネフ(2体目)「な、生意気なやづめっ!あ、あれ?」 イムネフは、アルウィンに向かってこん棒を振り回すが、手を滑らせてこん棒を落としてしまう。 バンブル「でやぁぁっ!」 バンブルの魔剣『巨人殺し』の一撃が、ヒル・ジャイアントの身体を深々と斬り裂く。 “赤毛”のイムネフ(2体目)「グ、グゲェッ!」 イムネフは断末魔の悲鳴を上げてその場に倒れ込む。 バンブル「この剣、巨人相手にはとんでもねえ威力を発揮するぞ」 バンブルの魔剣は巨人族相手には特別な強化魔力を持つ武器となる。 バンブルは、アルウィンとの挟撃による連携プレイで、見事に急所を狙った攻撃をたたき込み、一撃で大ダメージをたたき出したのである。 アスケウ(3体目)「ほへ?イムネフがやられだんが?ながまをよぐもやりやがっだなぁ〜」 アスケウはこん棒でバンブルに殴りかかる。 バンブル「ぐぁっ!」 身をそらして直撃を避けたものの、少しかすっただけで、身体に衝撃が走る。 不運なアタカヌム(1体目)「ごの村のニンゲンども全部ぐっでやるぅ〜!」 アタカヌムは、一番身近にいたアルウィンをこん棒で殴打する。 アルウィン「ぐぅっ!」 盾を構えて防ごうとしたが、巨人の怪力で弾き飛ばされる。 ラヴィリーナ「これ以上させないわ!マジック・ミサイル・ワンド発射!」 再びアタカヌムに5本の魔法の矢が突き刺さると、ズシンという音を立ててその場で倒れる。 残り1体だけとなったが、アルウィンとバンブルは先ほど、受けたダメージがひびいて、少し辛そうだ。 アスケウに斬りかかるものの、“赤毛”のイムネフを倒した時のような強力な一撃を当てるのはなかなか難しい。 アスケウは再びこん棒でバンブルに殴りかかるが、空振りする。 バンブル「あぶねえっ!そう何発も食らってたまるか!」 アルウィン「バンブル、こいつにもさっきの連携を決めるぞ!」 バンブル「おう!」 2人は挟撃戦法で丘巨人の隙を狙った攻撃をたたきむ。 アスケウ(3体目)「ぐぞぉぉぉ〜っ!もっどいっばいぐいだがっだ〜。牛も人間もまだまだいっばい・・・」 地響きをたてて倒れ込む。 なんとか勝利したものの、巨人達の攻撃を受けたバンブルとアルウィンは重傷を負ってしまった。 2人はキュアのワンドで傷を癒す。 ラヴィリーナ「2人とも大丈夫?」 アルウィン「ああ、直撃していたらこんなもんじゃ済まなかったかも」 もしも戦いの途中、イムネフがガントレットの呪いの効果で武器(グレートクラブ)を落とさなかったら、またアスケウが白内障により、攻撃を失敗しなかったら、危なかったかもしれない。 バンブル「巨人達は身体の具合が悪そうだったな」 アルウィン「もしかしたら、この近辺に、ミイラが出没する墓所でもあるんじゃないか」 バンブル「調査してみるか?」 白猫アルト「ニャッ!?ニャニャ!(えぇっ!やめといた方が良いよ)」 アルウィン「どうしたアルト?ラヴィ、アルトはなんて?」 ラヴィリーナ「やめた方が良いって」 バンブル「ははは、冗談だよ。オイラ達まで、ミイラの呪いやら病気やらにかかっちまったら洒落にならないもんな」 アルウィン「半分本気だったろう?」 バンブル「少しは・・・へへ」 ―村長宅― 村長「皆さん、本当にどうもありがとうございました。何もないところですが、どうかごゆっくりしていってください。あなた方はまさに、この村の救世主。いつでも歓迎いたします」 バンブル「いやあ、救世主だなんて照れるな」 アルウィン「こうして『“小さな巨人”バンブル』の伝説が語り継がれていくんだな」 バンブル「よせやい、ははは」 次のページへ ページ: 1/ 2/ 3/ 4/ 『運命の風』(Wind of Fate)ギャラリー へ戻る |