『運命の風』(Wind of Fate)第二話へ戻る ページ: 1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 1ページ目D&D3.5edキャンペーン『Wind of fate』12日目 ―ティーリーフ邸― メーラ「らびおねえちゃん、メーラちゃんにねこさんだっこさせて」 ラヴィリーナ「うん。アルトっていうの、仲良くしてあげてね」 メーラ「アルトくん、いっしょにおひるねしましょうね」 白猫アルト「にゃ〜」 白猫アルトは、メーラにすっかり気に入られ、まるでぬいぐるみのように抱きしめられている。 チャム「メーラはお気に入りのぬいぐるみを、イクス村において来ちゃったからさみしいのね。アルト、申し訳ないけど、メーラが寝つくまで一緒にいてあげてくれるかしら?」 白猫アルト「にゃー」 アルウィン「俺は、イクス村への調査隊の派遣を依頼しに、バンブルと一緒に市役所に行ってくるよ」 バンブル「おう。オイラはまだイクス村の人達が生き残っていると信じてるからな」 アルウィン「もちろんさ。そしてラヴィの集落にも行こう」 ラヴィリーナ「ありがとう」 エニラマルトルは、大都市というだけあってかなり広く、ここの出身であるチャムや、何度かこの街に来た事があるバンブルとアルウィン以外の者にとっては、右も左もわからない街だ。 とくに、まだ幼い子供達と、人里離れた森で暮らしていたラヴィリーナにとっては、迂闊に歩き回ると迷子になる危険が大きい。 しばらくは、ティーリーフ邸近辺から遠出しない方が良いだろう。 しかし、ラヴィリーナはいつまでもアルウィンの服を借りているわけにもいかないので、自分の服を購入しようと思い立った。 チャムはティーリーフ家の後継者としてやる事があるため、かなり忙しそうだし、アルウィンとバンブルは、イクス村への調査隊派遣の依頼をするため、市役所に出かけている。 皆に迷惑をかけるわけにはいかないのでラヴィリーナは、ティーリーフ家の屋敷にあった来客用の服(人間の女性用)を借り、1人で出かけた。 ちなみに、使い魔の白猫アルトは、メーラが抱っこして離さないので、そのままにしておいた。 ―ティーリーフ邸近く、店が立ち並んでいる― ラヴィリーナ「色々なお店がいっぱい。着るものはどこで売っているのかしら?」 キョロキョロとあたりを見回しながら歩いているラヴィリーナを、道行く人達が見ている。 イスリルル族は数多のエルフ種族の中でもニンフのように美しいと言われている。 その容姿端麗さに、皆ついつい目が行ってしまうのだ。 そんなラヴィリーナに声をかけてくる者がいた。 運動不足で腹が出た長身の男だ。 長身の男「あのう、美しい髪のエルフのお嬢さん、この街は初めてでつか?」 ラヴィリーナ「え、はい。昨日来たばかりなの」 長身の男「ほう、どちらからいらっしゃったのでつか?」 ラヴィリーナ「トニムの森の集落よ」 長身の男「申し遅れました。私、この街で、馬車の整備師をしている、イカアサムと申します。エルフのお嬢さん、よろしければ貴女のお名前を教えてもらえないでつか?」 ラヴィリーナ「あたしはラヴィリーナ・・・」 イカアサム「素敵なお名前でつね。見たところお一人のようでつが、どこの宿にお泊りでつか?本日の宿はお決まりでつか?宿をお探しなら、ウチに泊っていきませんか?え〜と、ぶっちゃけお一人でつか?いやあ、やましい気持ちなんてこれっぽっちもありません。ほんと私、困っている人を見ると放っておけないタチなんでつ、みたいな」 ラヴィリーナ「ティーリーフ家に泊めてもらっているの」 イカアサムは、『なんだ、宿泊先があるのか』と少しがっかりしたものの、しつこく話しかけてくる。 イカアサム「では、ティーリーフ家のお客様というわけでつか。あの、もしお暇でしたら、お近づきのしるしに一緒にお食事でも・・・みたいな」 ラヴィリーナ「ううん、もうみんなやることがいっぱいあって、大変なの。あ、こうしちゃいられない!あたし早く服を買わなくちゃ・・・」 イカアサム「服をお探しなら、この通りのほらすぐそこに婦人服専門店がありますよ」 ラヴィリーナ「教えてくれてありがとう」 ラヴィリーナは、急いで店へ向かった。 イカアサム「あの、ラヴィリーナさん・・・・・・あ〜あ、行っちゃった・・・せつね〜」 イカアサムは、近くの婦人服専門店を紹介してしまった事を後悔した。 イカアサム「ああ〜〜っ!俺のバカ!もっと遠くの店を紹介して、一緒に歩いて案内すれば良かった!しかもあの婦人服店、男子禁制じゃねえかよぉ!うわぁ、むっちゃせつね〜〜」 ―婦人服専門店『エリザベス』― ハーフエルフの女性「いらっしゃいませ。お客様、どのようなお召し物をお探しですか?」 ラヴィリーナ「おメシ物?いえ、食べ物じゃなくて、着る物を探してるの」 ハーフエルフの女性「???・・・失礼ですが、お客様、この街は初めてですか?」 ラヴィリーナ「ええ、昨日着いたばかり・・・です」 ラヴィリーナは、お店の人の上品で丁寧な対応に、こちらも共通語で丁寧にしゃべらなくてはイスリルル族の威信に関わると考え、できるだけ上品にしゃべろうとする。(ラヴィリーナは共通語をつい最近まであまり使っていなかった) ハーフエルフの女性「お客様はもしかして、トニムの森ご出身では?」 ラヴィリーナ「え?なんでわかったの?」 ハーフエルフの女性「(ニヤリ)やはり、そうでしたか。高貴な雰囲気を漂わせていらっしゃいましたので・・・」 ラヴィリーナ「え?高貴だなんて・・・ほんと?」 エリザベス「ええそれはもう。私は、エリザベスと申します。お恥ずかしながら、このお店の名前にもなっております」 ラヴィリーナ「あたしはラヴィリーナ・イスリルル・・・です」 エリザベス「(エルフ語でしゃべる)ラヴィリーナ様、どうぞエルフ語でお気軽にお話しください。高貴なラヴィリーナ様の魅力を一層引き立たせる事請け合いの服をご用意させていただきます」 ラヴィリーナは親切なエリザベスに親しみを覚え、色々と話しながら、おすすめの服を用意してもらった。 実のところ、エリザベスは、イスリルル族が一般常識に疎い事を知っていたので、いたずら心から親しげに話し、多少高額の服を用意したのだ。 しかもその服はただ高額なだけではなく、特殊なシチュエーションで着用するコスチュームであり、一般的に外で着る服ではなかった。 ラヴィリーナは、そんな事も知らずに、エリザベスに手伝ってもらって、そのコスチュームに着替え、ティーリーフ邸で借りて着ていた服を手下げ袋に入れて、帰る事にした。 エリザベス「とても良くお似合いですわ。街の人々の視線を釘付けにする事間違いなしです」 帰り道の街の人々の視線は、先ほどまでとは比べ物にならない状況だった。 ざわざわ・・・ひそひそ・・・といった声があちこちから聞こえてくる。 ラヴィリーナは、エリザベスの言った通りだと思い、とても良い買い物をしたと喜んでいた。 また、先ほどのイカアサムのように、声をかけてくる者が何人かいたが、ラヴィリーナは、早くティーリーフ邸に戻ってみんなにこの姿を見せたいと思い、 「ごめんなさい、急いでいるの」と言って、かわして行った。 ―ティーリーフ邸― オープンカップ&ボトムレスのレザー・ボンデージ(+ネコミミ、鈴付きチョーカー、尻尾)を着たまま、意気揚々と帰って来たラヴィリーナを見た3人は、そのあまりにも信じられない格好に度肝を抜かれた。 アルウィン&バンブル「*%#ぉ@$!?」 チャム「どうしたのそんな格好して?!」 ラヴィリーナ「え?何?もしかしてこのカッコ変?でもお店の人が魅力を引き立たせる服だって・・・」 詳しい事情を聞いた3人は意地悪な店員に腹を立てる。 バンブル「なんてふざけた店員だ!返品に行こうぜ!」 アルウィン「いや、だめだ」 バンブル「泣き寝入りする気か?」 アルウィン「返品に行ったらそれこそ恥じの上塗りになるだろ?」 バンブル「・・・確かに・・・」 4人は、クーリングオフをあきらめ、おとなしく泣き寝入りする事にした。 チャム「気をとりなおして、明日一緒に別の服を買いに行きましょう」 13日目 ラヴィリーナはチャム、ディーネ、トレイシー、メーラと一緒に出かけて衣服と呪文構成要素ポーチを購入。 呪文構成要素ポーチとは、魔法を唱えるのに必要な材料を入れておくポーチである。 ラヴィリーナ「これで魔法の材料は十分。これからもっと難しい魔法を使えるようにがんばらなきゃ」 ディーネ、トレイシー、メーラもそれぞれ衣服を購入し、さらにメーラは新しいぬいぐるみを買ってもらった。 ディーネ「ねえ、お兄ちゃん達の分も買っていってあげようよ」 チャム「そうね。みんなで選びましょう」 トレイシー「チャムお姉ちゃん、エニラマルトルには大きい本屋さんがあるって本当?」 チャム「ええ、ちょうどいいわ。帰りに寄っていきましょう」 ―ティーリーフ邸の庭― 一方、ティーリーフ邸では、ビリーが、アルウィンに木製の剣で稽古をつけてもらっていた。 アルウィン「ビリー。無理に仕掛けるんじゃなく、相手を良く見て、斬り込むタイミングをはかるんだ」 ビリー「おう・・・じゃなくて、はい!」 ―公園― ジャンとバンブルは、近くの公園で一緒に散歩していた。 バンブル「オイラもこの街はほとんど知らないから、まずはティーリーフ邸近辺をすっかり覚えて、迷子にならないようにしなくちゃな」 ジャン「うん。あ!バンにいちゃん、あのおみせで売ってるのなに?」 バンブル「お、スティック型のドーナツなんて珍しいな。さすがエニラマルトルだぜ。ようし、お土産に買っていこう」 ジャン「やったー!」 14日目 バンブル、アルウィン、ラヴィリーナは、エニラマルトルの兵士団を連れて、イクス村に向けて出発した。 ____________________________________ 【兵士団の構成】合計10人 兵士団隊長ガレン(4レベル・ファイター) 副官バーナード(3レベル・ファイター) 3人の部下(2レベル・ファイター) 5人の部下(1レベル・ファイター) ____________________________________ 兵士団隊長のガレンは、チャムの父、マサラ・ティーリーフとは旧知の仲だったという。 ガレン隊長「ティーリーフ卿とはよく一緒にお酒を飲んだよ・・・。こんな事になるなんて・・・いや、まだあきらめちゃいけないな。さあ、出発しよう」 バンブル&アルウィン「よろしくお願いします」 16日目 ―イクス村跡― 馬で2日ほどかかり、焼け爛れているイクス村の跡地に到着する。 バンブル「これが・・・オイラ達のイクス村・・・」 ラヴィリーナ「・・・ひどい・・・」 アルウィン「ヘルダーさん!」 ヘルダー夫妻の遺体を発見した。夫婦で手をつなぎながら亡くなっている。 その近くに、斧を持ったドワーフの男の遺体がある。周りにゴブリンの死体が3つ、転がっている。 アルウィン「マッタスさん・・・最後まで、勇敢に戦って・・・」 バンブル「マッタスさんが、ドラグリオンの寺院の通路を開通させてくれなかったら、オイラ達は逃げられなかったんだ・・・ありがとう・・・」 ガレン隊長「これはひどい。せめて遺体を埋葬しよう。バーナード、すぐに準備にとりかかるぞ」 バーナード副官「はい!」 丸2日かけて埋葬する。 判別できる死体もあれば、もはや原型をとどめていない死体もあるが、レン師匠、ゼノン神父、サウスレイ先生、ティーリーフ夫妻の遺体らしきものは見つからなかった。 バンブルとアルウィンはレン師匠達が捕虜になって生きているという事を祈るのだった。 埋葬を終え、近辺の調査をしたのち、兵士達は帰る事になる。 ガレン隊長「すまない。エニラマルトルをこれ以上離れるわけにはいかないゆえ、我々が同行できるのはここまでだ」 アルウィン「いえ、ありがとうございました。後は俺達だけで、トニムの森を回ってから戻ります」 バンブル「チャムには辛い事だけど、イクス村の状況を伝えてやってください」 ガレン隊長「わかった。君達も、くれぐれも無理はしないように。なるべく早く戻ってきて、チャム嬢を安心させてあげるように」 バンブル「はい」 兵士団を見送り、いよいよトニムの森へ向かう。 トニムの森はここから3日の距離にある。 ラヴィリーナ「お父さん、お母さん、ロリ姉・・・」 次のページへ ページ: 1/ 2/ 3/ 4/ 5/ 『運命の風』(Wind of Fate)ギャラリー へ戻る |